レビュー

 

 監督である澤田正道の功績とは、被写体である林冨士夫に対する共感と、ありのままの証言を収めた大胆さの両方を作品に刻み込んだことだろう。

   ハリウッドレポーター

 桜花の爆弾の仕掛けを詳細に説明していても、より感情的で、道徳的な問題について語っていても、この老人は少しも動揺することはないが、自らが訓練、指揮した桜花隊の一員として出撃するチャンスがなかったと、カメラの前で後悔するさまはあまりに生々しい。出撃せずに生き残ってしまったこの老人はその日以来、喪に服していており、死んでいった兵士達の亡霊とともにのみ生き延びている。そこには特攻そのものに対する不条理と天皇の無関心に対する怒りがある。この元カミカゼの特攻志願に関する動機は、我々には、まったく不可解ですらあるが、観客は自分自身の中でその答えを見つけて行くはず。

   ル•モンド

 元特攻隊員の証言によって、観客は今も昔も、命の犠牲を払ってまで戦闘に繰り出す若者たちに対する理解を深めることが出来る。

   テレラマ

 林富士夫の顔に執拗なまでに迫るカメラ。王兵は『鳳鳴 中国の記憶』で3時間に渡る老婆の独白を通して中国のポートレートを映し出した。澤田正道のカメラはフィックスで捉えるのか、それとも長回しにするのか、悔恨の表情かそれとも変わり続ける表情を捉えるのか、模型を使ってアメリカの戦艦に突っ込む特攻の再現を試みたり、シューマンの曲を流してみたり、試行錯誤しながら被写体に迫ってゆく。唯一のアーカイブ資料として、桜花隊の集合写真があるが、当の林本人にとっては、自分がその写真のどこに写っているのか定かではない。かつて犠牲を払って出撃していった若者たちの歴史を忘却に葬るために、手段を選ばない安倍総理大臣の勢いによって再び台頭し始めた戦闘的なアイデンティティーが、浮かび上がった現代日本の新たなる現象を想起せざるを得ない。

   リベラシオン

 率直に死生観を語る林氏は、確かに動揺しているようだが、それ以上に画面を支配する沈黙に身を委ね、死者たちの記憶に寄り添うように虚空を見つめるこの男の表情ほど感動的なものはない。そして謝罪の言葉も一言も発する事なかった天皇を想起する彼は、苦悩に満ちている。澤田正道とベルトラン•ボネロによるこの歴史的な証言は、国民が一丸となって天皇陛下のために命を捧げようとした一時代を驚くべきやり方で物語っている。

   フランス通信社

 神風特攻隊は、武士道精神の核を成す“散華の思想”を体現したロマンとして語られて来た。しかし、その実は、どうか。自爆攻撃の“棺桶爆弾”に登場する若者たちは自分を“軍神”と思っていたのだろうか。霞ケ浦航空基地から木更津へ芸者を買いに行った彼らは、射精する時も「天皇陛下万歳!」と叫んだのだろうか。そんな人間兵器を操った司令官は、昭和天皇が「済まない」の一言も残さずに死んだことを、「しらばっくれ通した」と非難する。怨嗟渦巻く悲劇も、後から見ればかくも喜劇化した遇行でしかないと語った希有の記録映画だ。

   足立正生(映画監督)

 貴重な歴史の証言である。現代において、みんな戦争は悲惨だからTVや映画では「愛」や「勇気」があったとまとめて伝えようとしている。それで許されるのだろうか。実際戦争なんて愛も勇気もないのだ。そうゆうものをきちんと伝える、言える人が減っているのは本当に残念だ。当事者はなかなか言いたがらない、話すことは勇気がいるからである。監督が勇気をもってこの作品を作ってくれたことは大変ありがたいことである。戦争はロマンや憧れじゃ成り立たない。日々「起きるのがつらい」「疲れた」「やる気がおきない」などとくだらないことで泣き言が言える現代になってしまった。戦争はロマンや憧れじゃ解決されない。

   鈴木邦男(評論家)

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